(左筆者、右大杉会長)

 

 

 

自分が自分の主治医             回生眼科医院院長 山口 康三

私は研修医時代、はじめは内科医になるべく研修をしていました。糖尿病の食事教室を開いて、「健康になる食事ですよ。」とお話していました。自分でもそのように思っていましたので、そういう食事をしていましたが全然体調は良くありませんでした。良くないどころか、だんだん悪くなってきまた。

そのような折に、町の本屋さんを歩いていると、「玄米食」「玄米食」と目についてしまいます。医学部では「玄米食」は習ってはいません。家内が「試しに玄米食べてみたら。」と勧めてくれました。「玄米?」家内はすでに玄米食を知っていました。最初は疑いの目で食べてみたのですが、便通が良くなり、身体が軽くなり、体重がちょうどいいほどに減ってきました。そして頭も冴えてきたような気がしました。からだが「調子がいい。」と言っています。その頃から現在までほとんど病気らしい病気もせず体調の良い状態を維持できているのも、そのきっかけを作ってくれた家内のおかげだと思っています。

そして一度専門家について勉強してみようということになり、その頃「玄米食」という題の雑誌があり、その中に登場されていた先生方の中から選んで門戸を叩きました。

私が最初に玄米食や東洋医学を教えて頂きましたのは、馬渕(まぶち)通夫(みちお)先生でした。先生は、その頃、日本綜合医学会の理事であり、第16回の学会頭も務められていました。馬渕先生は書店にある健康に関する本ほとんどすべて購入されていて、しかもそのすべてに目を通されていました。なぜそういうことがわかるのかと言いますと、どの本にも最初から最後まで大事な個所に定規できれいに線が引いてあるからです。

馬渕先生が薦める良書は少ないのですが、その先生が「良書発見」と絶賛された本が出ました。馬渕先生が会長をされていた日本みどり会の会報誌『健康と長寿』昭和622月号で大杉先生が編集された村上浩康著『血液循環療法』を「良書発見」とご紹介されたのでした。次にその原文を少し紹介させて頂きたいと思います。

 

『血液循環療法』(その一)

良書を発見

私はたいてい毎日、治療後散歩かたがたあちこちの本屋をまわり、良書を探し出すのをたのしみにしています。

 たまたま先週渋谷の紀伊国屋で表題の本をみつました(千書房刊・4800円)。この血液循環療法については40年くらい前から関心をもちつづけていたものでした。

 血液循環療法は、小山善太郎という人が明治の末期から昭和初期にかけて、幾多の名士の難病をなおし、『百病治療秘訣』『血液循環療法講習録』の著書があったのですが、既に絶版となり入手不能であったのです。

 それが小山善太郎先生に師事した一番弟子の村上浩康先生により出版されたのです。この出版をまたずに村上先生は89歳で他界されたそうですが、弟子の方がたのお骨折りでこのような良書が残されたことは、小山先生も喜んでおられることと思います。

 さて前置きが長くなりましたが、この本のはじめに本書の目的の一つは、<現在、癌、成人病(心臓病、脳血管疾患、高血圧疾患、糖尿病、肝硬変)や頑固な慢性病あるいは不治の難症等でお困りの方々にとって、病を克服する力強い最後の手段である「血液循環療法」があることを知っていただき「もう治らない」とあきらめないで、希望を持っていただくために書かれたことです>とあります。

 治療道45年の回想には、癌をはじめ数多くの頑症を比較的短時日に全治せしめた例が、いろいろと述べてありますが、その中での圧巻は黒川利雄博士との出会いでした。

 それは、昭和23年春、弟子の一人から、大学病院に入院中の恩人が「肝硬変の末期であと十日ほどしかもたない」と申し渡されたので、ぜひ出張治療をしてほしいと頼まれ、担当の内科長の許可も得られたとのことで、引受けたときの話です。少少長くなりますが、おもしろいので次に引用しました。

(出会いのエピソード)

 大学病院に着くと、まず依頼のあった患者の担当医に会い、頼まれて治療に来た由を告げますと、その医師は、「ああ、伺っていますよ。患者の最後の希望だから、気持よくさすってやりなさい」といわれました。

 私は、わざわざ、慰安のために、気休めで大学病院まで、出張して来たのではありません。私は、患者さんを一度引受けたからには、「必ず治す」という信念の下に治療をやりました。この時も同じ気持ちでした。たとえ、癌であろうと、肝硬変であろうと、恐れるに足らないのです。しかし、そんなことはいわず、黙って、病室へ赴きました。

 病室に入って診ますと、ベッドに横たわった患者の病態は、とてもひどい状態で、確かに末期症状を呈していました。腹部は、腹水とガスが溜まって大きくふくれ上がり、カエル腹になっていました。皮膚は全身浮腫(むくみ)のため、ブヨブヨでした排泄は完全に麻痺し、この状態では、死を待つばかりです。

 早速、私は担当医、看護婦や家族の者の見守る中で、腹部の治療から始めることにしました。この時ばかりは、神にも祈る気持で、静かに手を当てました。

腹部治療を施してゆくうち、麻痺していた腸管が動き始め、溜まっていたガスが排泄され始めました。周囲で見守っていた人々は、あまりの悪臭に耐え切れず、病室から外に出た程でした。当の患者は今迄、腹が張って苦しかったのが、気持よくガスが出たものですから、少し楽になり、この時、「助かった!!」と実感したそうです。(中略) その夜、当の患者は、ガスが一晩中出続け、翌日には、溜まっていた大量の尿と、続いて便が、排泄されました。それから毎日治療を重ねる毎に、腫れ上がっていた腹も小さくなり、浮腫も引いてきました。

 3日目には、自力で立って排便することが出来る様になりました。順調に、少しずつ快方に向かい、元気も出て、二週間目には、自由に歩ける様になり、遂に、約3週間で退院させました。

 この事以来、私の治療の腕は、大変な評判となったようです。その時の内科長(教授)が黒川利雄博士(元東北大学学長、現癌研究会附属病院名誉院長)でした。

 黒川博士は、「村上さんの腕は名人芸だなア」と感心され、率直にお認めになりました。その後、私は特別扱いとなり、何時でも、約束なしで直接、博士に面会出来る様になりました。

 私の治療を院内で許可され、最後まで続けさせた黒川博士は、学者として又、医師として真実を見る目、寛大さは誠に立派なものでありました。

 

私も早速購入して見ました。その本の中に血液循環療法の講習会のお知らせが載っていました。馬渕先生にご相談申しあげたところ、「是非とも習ってくるように。」ということでしたので、第1回の東京で開かれた講習会に受講の申し込みをしました。馬渕先生は大杉理事のひげが素晴しいと度々おっしゃっていました。その頃の大杉先生は、現代に蘇った縄文人のように、啓示を受けた聖人のように、豪華客船の船長のように、立派な黒々としたひげをたくわえていらっしゃいました。

その年の4月から始まり、毎月1回目黒区民センターで講習を日曜日の朝から夕方まで畳の部屋に閉じこもって受けました。午前中は講義が中心で身体の解剖や病気の場合の治療のポイントに関する話が次々と系統的に行われました。皆様も御存知のように、よく整理されていて、とてもわかりやすいお話でした。

午後は2人一組で実践練習が中心でした。肩、首、頭から上腕、前腕、手、指、背中、腰、大腿、下腿、足、腹部と非常に広範囲を指、手を使って治療するのですから、集中力 が必要です。そして様々な痛みやこりを取る方法を実践練習しました。すると、不思議なことに血圧が高かった方が、治療をすると正常になったり、五十肩が治って手が急に上がるようになったり、正座がまったくできなかった人が、突然正座ができるようになったり、何十年も続いていた腰痛がすっかり治ったりといろいろなことが起こったのでした。その素晴しい効果に大変驚いてしまいました。 

会員の皆様はすでによく御存知の通り、血液循環療法の特徴を一言でいえば、押し方がとても柔らかいということです。押すというよりも触るに近い感じで押して行って抵抗があればそこで止めるという感覚です。そして、勢いよく離す。「漸増(ぜんぞう)急減圧(きゅうげんあつ)指で圧迫を加えると、その部位の毛細血管の血液は、圧力によって周囲に押し出されて、次の瞬間、パッと圧力を急に抜くことで、以前より多くの血液が、圧力を解放された反動として元の部位に戻ってくるというわけです。

自分の指と手を使って、いつでもどこでも器具を使わず、工夫すれば自分自身にも治療ができるという特徴があります。

患者さんの中には、病院であまり詳しい説明を聞かないうちに手術や強い治療を受けてしまう方がいます。そのような時に、患者さんに「あなたの健康はどのくらいの価値がありますか。」と尋ねることがあります。「もし、あなたが一億円を銀行に預けるとしたら、ろくに話を聞かないで預けてしまいますか。」「一千万円だったらどうですか。」「百万円なら、十万円なら。」健康はお金を出しても買えないことがあります。「自分が自分の主治医」という覚悟が大切だと思います。

21世紀は自分の健康は自分で守るという気持ちが大切です。世の中の分業が進み、世の中の全体を見て物事を考えることが出来る人が少なくなっています。そして、物事を正しく見る目が必要です。そういう知恵を身につけることが非常に大切になっています。そのためには、食事や運動やストレス解消の方法を学ぶことも必要です。病気の知識も必要になります。食養学院などで勉強されるとよいと思います。その上に血液循環療法があれば、まさに「鬼に金棒」です。

 

筆者プロフィール

日本綜合医学会副会長。血液循環療法協会顧問。回生眼科医院院長。日本眼科学会認定専門医。日本東洋医学会専門医。西洋医学と東洋医学の接点を求め、目だけでなく全身の活力を高め、真の健康体を目指し、食事を中心とした生活改善指導もあわせた診療を行い成果を挙げている。

著書「白内障・緑内障が少食でよくなる」「ほんとうは治る防げる目の病気」