糖尿病患者の治療前の血液像

(連鎖状でドロドロ)

 

 

同じ患者の治療後の血液像

(見事にサラサラになる)

         血液循環力アップ-薬に頼らない回復法
                                                                            血液循環療法協会 会長 大杉幸毅

 普段治療して気づくことは、治療効果の良い患者さんと悪い患者さんがいることである。すぐに良くなる患者さんもいれば、一生懸命治療してもなかなか効果が出にくい患者さんがいる。どこに違いがあるのだろうか?

 一言でいえば、自然治癒力の違いであり、その大きなウエイトを占める要素が「血液循環力」である。簡単に言えば普段の患者さん自身の血液循環の良し悪しによって治療効果が大きく違うということである。例えば、スポーツマンの患者さんはすぐに良くなるが、普段運動をしない肥満の患者さんは治療効果が悪い。

 東洋医学では昔から血液循環が悪いために症状や不定愁訴が出る病態を「瘀血(おけつ)」(悪血、汚血、古血ともいう)というが、私たちが普段治療する患者さんは圧倒的に瘀血の方が多い。瘀血の程度がどれくらいあるかは、当協会で作成した問診表の質問事項から解るようになっている。瘀血の程度により治癒力が左右されるので、治療効果を高めるには瘀血をいかに解消していくかにかかっている。つまり、血液循環力をいかにアップするかである。

 瘀血とは

 私たちの体内には血液が循環をしていて、消化器系から取り込んだ栄養(ブドウ糖)と肺から取り込んだ酸素を赤血球が体の隅々の細胞まで運搬し、細胞内のミトコンドリアでブドウ糖を酸素で燃やしてATP(アデノシン3リン酸)という物質を生産し、これが体の活動のエネルギーの基である、と理解している。では、血液はどのような原理で循環しているのだろうか?

 1628年にイギリスの解剖学者で医師のウイリアム・ハーベーが血液循環説を唱え「血液は心臓から出て、動脈経由で身体の各部を経て、静脈経由で再び心臓へ戻る」と発表した。当時、毛細血管の存在はまだわかっていなかった。顕微鏡が発明されてから毛細血管の存在が明らかになり、物質(酸素、炭酸ガス、栄養、老廃物、免疫物質など)は毛細血管で出入する大変重要な働きをする器管であることが解った。私たちの体内血管の総延長は10万km、地球2周半と言われ、そのうち毛細血管は99%を占める人体最大の臓器である。毛細血管の入り口の細動脈までは心臓のポンプ作用により、動脈硬化症などの病気がなければ血流が良いが、9.9万Kmもある毛細血管網の血流は常に良いとは限らない。実はこの毛細血管網の血流の良し悪し、特に毛細血管網の入り口にあるグロミュー管(バイパス血管)の働きが健康状態に大きく影響する。冷え性や肩こり、腰痛など常に体調不良を訴える人は、この血管の循環が悪く、こういう体質を「瘀血」という。

瘀血の症状(サイン)

  毛細血管(グロミュー管)の血流が悪いと、熱を運搬する動脈血の供給が悪く、末梢の熱が奪われやすく、冷え性を訴える。また酸素の供給が悪いのでエネルギー効率が悪く、疲れやすい。酸素の供給が悪いと解糖(嫌気性)を行い乳酸、ピルビン酸などの疲労物質と呼ばれる中間産物を産生し、これらの物質が細胞内にたまると酸性化して組織を硬化させ、代謝が低下して慢性化すると「凝り」と呼ばれる「シコリ」を作り、更に毛細血管を圧迫して循環を悪くする。私が小学校の頃、教室のストーブの温度を上げようとして燃料の薪をいっぱい入れた。すると空気(酸素)の供給が悪くなりブスブスとくすぶって煙ばかり出て燃えず、返って温度が下がったのを思い出すが、そのような現象とよく似ているのではなかろうか。

瘀血の人は疲れやすいので、疲れるとすぐにケーキや饅頭などの甘い物が好きでよく食べる。すると血糖値が急速に上がり、一時的に元気になるが、習慣的に食べているといつの間にか燃料を増やし過ぎることになり、相対的に酸素が足りなくなって、エネルギー産生の効率が低下するばかりか、糖質は血液をドロドロにして末梢循環を悪くし、更に血管の組織破壊を起こすので、瘀血状態がさらに悪化して悪循環になり重症化する。

 末梢循環が悪いと、冷え性、肌が荒れやすく、血色が悪く、筋の硬化から肩こり、首痛、頭痛、腰痛や女性では生理不順、生理痛、低体温症などの不定愁訴に悩まされる。更に自律神経の機能も低下する。

病院で受診して検査を受けても異常は発見されず、「どこも悪くありませんよ。気のせいですよ。」と言われる。具合が悪くて病院に行ったのに、「いったい、これはどういうこと?」となる。瘀血は病気ではないのだろうか?

西洋医学に瘀血の病理概念がない

 東洋医学では立派に病気として扱い、その治療法も確立され「駆瘀血剤」がある。ところが西洋医学には瘀血の病理概念がなく、瘀血の症状を訴えても病気として扱われない。なぜか?西洋では瘀血で苦しむ人が少なかったからではなかろうか。そのような愁訴よりもより深刻であったのは、ヨーロッパ大陸は陸続きで昔から戦争や侵略が繰り返されて人々の移動が多く、ペストなどの感染症が度々大流行し多くの人命を奪ったことだった。そこで感染症の研究や戦争で傷ついた兵士の治療法(外科)の医学が発達したのである。ところが、近代化(富国強兵政策)急いだ明治政府は西洋医学をそのまま導入して、長い歴史の中で培われた日本人の体質に合った日本人のための医学(和方)は廃れていった。日本の近代化は西欧列強への仲間入りであり、軍国主義へと突き進んでいった。当時採用した西洋医学はドイツ医学で、栄養学も同様に「北緯50度の栄養学」といわれる「高たんぱく・高脂質・低糖質」の動物食を推奨するフォイト(ドイツ・ミュンヘン大学教授・栄養学者カール・フォン・フォイト)栄養学が導入された。実は、これは軍隊を強くするための栄養学でもあった。

  西洋と日本では気候風土に大きな違いがあり、生活環境や食べ物が違うので体質や病気も違ってくる。ヨーロッパは大陸性気候で比較的年中温暖で気圧の安定した気候が続く。それに比して日本は東アジアモンスーン帯に属し、1年中気圧の変動が激しく、3,4日おきに低気圧がやってきて天気が崩れ変動が激しい。低気圧が来襲すると酸素の供給が悪く、適応力の弱い人は高山病のように体調を崩しやすく、自律神経の不調から瘀血になりやすい傾向になる。

血液循環力をアップして瘀血を解消する

 治療効果を高めるには瘀血をいかに解消、軽減するかにかかっている。瘀血の原因は、自律神経の不調による適応力(血液循環調節力)の低下、糖質の摂りすぎによるグロミュー管の機能低下、冷えによる血管の収縮、硬化、酸素不足により乳酸の蓄積などによる組織の硬化による末梢循環の低下、運動不足で筋肉量が減少することによる基礎代謝量、発熱量の低下、低体温化などがある。

自律神経は長い進化の過程で適応した生体バイオリズムであり、人類は長い間、日の出とともに起きて活動し、日暮れとともに寝ていたのが、日本では戦後電気の普及とともにラジオやテレビが広く普及し、夜間も活動し夜更かしになって、バイオリズムを乱したことにより自律神経のバランス崩している。エアコンの普及は気温や湿度の変化に適応する能力を低下させてしまった。自律神経の機能を元に戻すには、早寝早起き、温冷交互浴、裸療法、排毒法(デトックス)などの健康法がある。

  糖質(砂糖、アルコール)、脂質を過剰摂取しない、質の良い少食を実践する。空腹時間を楽しむ。少なくとも食事前1時間は空腹状態になるくらいの食事量にする。空腹状態の時が、血液がサラサラで血液循環が一番いいのである。空腹状態が続くと体内に蓄積された余分なものをエネルギーに変えるので体がきれいになる。少食の目安はその人の基礎代謝量(年齢、体重、性別で異なる)と日常活動量とどんな病気かによって違うが、通常軽作業者は1300Kcal~1500Kcal以下を目安にする。

 質が良い食事とは、ミネラル、ビタミン、酵素、抗酸化物質、オリゴ糖などの成分がバランスよく含まれた旬の野菜や玄米などの有機農産物が推奨される。加工食品や体を冷やす食品を避け、有酸素運動を継続して筋肉量を増やすこと。比較的手っ取り早く誰でもできるのはウオーキングである。1日1万歩以上を目標に胸を張って大股で少し早足で歩くのが良い。血液循環力がアップすると、疲れにくく、夜はぐっすり眠れて熟睡でき、朝はすっきり目覚め、食欲が増進して空腹を感じる様になり、肩こりや腰痛、頭痛はいつの間にか感じなくなる。そのような体を作るように生活習慣を変えることが、病を早く治したり、病気予防への近道である。

筆者プロフィール

元農林技官。血液循環療法協会会長。血液循環療法専門学院院長。大杉治療院院長。NPO日本綜合医学会理事兼関西部会事務局長、食養学院副院長(教授)。日本ホリスティック医学協会専門会員。全国健康むら21ネット世話人。千島学説研究会理事。血液循環療法の普及を通して「思いやり」と「いたわり」のこころを広め、病人の少ない「癒しの社会」を目指し活動している。

著書「シコリを解けば病気が治る・血液循環療法・理論編」、「血液循環療法症例集」「血液循環療法・実践編」、「血液循環健康法」、「血液循環療法入門」「血液循環療法上達の秘訣」、

DVD「あなたも出来る・手技・血液循環療法」など